〜 Believe Me,Believe You 〜
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『ねぇ、キミは今週末暇かな?』 夕食が終わり、リビングでテレビを見ているとき、ふっと優が聞いてきた。 「うん…久しぶりにまとまった休みだからね。」 僕がそういうと、優はふっとうれしそうな表情になった。 『そう?じゃ、広島に行こうよ!』 「えっ?またどうして?」 『うん、久しぶりにね…広島の街を歩きたくなったんだ…。』 広島か…そういえば、僕も最近行ってないなぁ…。 …久しぶりに歩いてみるか… そう思った僕は優に 「うん、いいよ。」 と一言。そういうと優の表情はぱぁっと明るくなった。 『わかった、じゃ準備してくるね。』 そう言い残し、優は軽やかにリビングを出て行った。 「ふふふっ、あんなにはしゃいで…。」 そして、金曜日の夜、僕たちは東京駅にいた。 『久しぶりだね、二人で遠出するのって。』 優はいつになくはしゃいでいるようだ。 こんな優を見たのはいつぶりだろう…、確か…。 『ねぇ!そろそろ電車が入るよ。』 優のそんな一言で、僕は現実に戻された。 「じゃ、いこうか。」 『うん。』 手荷物は二人ともリュックサックひとつだけ。 いつも僕たちはどこに行くにしても、荷物は最小限、余分なものは持たない主義だ。 車内にはいろんな人たちがいた、 家路につくサラリーマンや僕たちのような旅行者まで、 列車は、独特の雰囲気と静けさを持って、東京駅を後にした。 この旅が僕らにとって、とても大切な旅になるとは、 このときの僕は気づいていなかった。 『・・・ねぇ・・・おきて…そろそろ大垣に着くよ。』 優の声で目がさめた、眠い目をこすって、乗り換えの準備に入った。 「そういえば、あと何回乗り換えるの?」 『えっと…ちょっと待っててね。』 そういうと、優は小さい時刻表を調べながら 『うーん…米原に、姫路に、岡山だから…3つだね。』 「・・・で、あとどれぐらい乗るの?」 『そうだね…あと9時間ってところかな?』 「ふえぇ〜。」 一瞬にして気が遠くなった。 『フフッ、大丈夫だよ、結構早く感じるから。』 「…そうだね。」 普段、高速バスや新幹線で移動していたので、 夜行快速で広島に行くのは初めてだった。 「長らくのご乗車ありがとうございました、まもなく広島に到着致します。」 本当に長らくのご乗車でしたよ…と、心の中でツッコミを入れた。 僕が降りる準備をしていると、優が不思議そうな顔をしながら聞いてきた。 『ごめん、降りるのはまだ先なんだ…。』 「へ?広島で降りるんじゃないの?」 『うん、でもまずは宮島に行きたいと思ってるんだ。・・・だめかな?』 「わかった、そういうことならいいよ。」 僕は元の座っていた座席に腰をかけた。 広島からさらに30分、宮島口駅に着く。 ここから宮島までは船で行くことになる、しかも大鳥居の近くをまわる航路らしい。 ちょっと寒いけど、僕たちはデッキに乗り込んだ。 『…潮風が気持ちいい…。』 「うん…」 風はひんやりと冷たいが、潮風はなんだかとても暖かかった。 『ほらっ、見て!』 「・・・すごい…いつ見ても立派だよね…。」 『あの鳥居、台風がきても倒れなかったんだよ、本殿のほうはまだ修復してるらしい けどね。』 「そうなんだ…。」 宮島につき、厳島神社へと向かう。 「ふぅ…やっぱ、ここにくると広島にきたって感じするなぁ…。」 『そうだね。やっぱり広島といえば、ここのイメージが強いからね。』 日本三景の一つ、安芸の宮島。 島はこの日も多くの修学旅行生や、観光客でにぎわっていた。 僕たちは、海沿いの厳島神社へとつづく砂利道を歩いた。 「やっぱり、鹿が多いね…。」 『うん、気をつけないと、荷物とかに食いつかれるからね。』 そういえば、さっき修学旅行生のもっていた紙袋に噛み付いてたなぁ…。 そんなことを考えているうちに、厳島神社の入り口にやってきた。 拝観料を払い、中へ入る。 船から見ている分には分からなかったけど、 やはり近くで見ると修復作業をしているところがあった。 こうして見ると、人間の力って自然の前では赤子同然なんだなと痛感する。 そう思いつつ、やがて本殿へとついた。 「さて、やっぱりお参りしていかなきゃね。」 『うん。』 賽銭箱に小銭を入れて手を合わせる。 「・・・・・・。」 『・・・・・・。』 「・・・さてと。」 僕のほうが先に終わったようだ、でも優はまだ手を合わせている。 本殿を背にして鳥居の方を見遣る。 ただ海面においてあるだけなのに、あの台風でも倒れず立っている姿は、 やっぱりすごいと思う。 『おまたせ、じゃいこうか。』 「うん、ところで何をお願いしてたの?」 そう聞くと、優はいたずらっぽく 『フフッ…秘密。』 と一言。僕はちょっと拗ねて 「えー?…けち。」 優はそんな僕を見てふっと笑う。 でも、何故かその笑顔に不思議と違和感を覚えた。 ・・・やっぱり、最近の優は何か違う。 『ほら、ぼーっとしてないでいこうよ。』 「う、うん。」 その時の優はいつもの優だった、僕の気のせいなのだろうか…。 大鳥居の横を通り過ぎ、神社の前までやってきた。 『そろそろ帰ろうか。』 「そうだね、もう日が暮れてきたからね。」 僕たちは宮島を後にした。 僕たちは船で広電の乗り場まで戻ってきた。 帰りは、大鳥居の前を回らなかったので、結構早く着いた。 「さて、僕は市内に宿を取ってあるからこのまま広電に乗るけど、優は?」 『私も広電で帰れるから、途中までいっしょに帰ろう。』 「うん、わかった。」 こうして、僕たちは広電に乗り込んだ。 電車の中で、今日のことをいろいろ話し込む。 そうこうするうちに、優の降りる駅が近づいてきた。 『じゃ、私はここで降りるね、それじゃ。』 「うん、またね。」 ホームに立つ優に手を振り、僕を乗せた電車は市内へと向かった。 宿に着き一休みしていた時に、最近の優を思い返していた。 無理にはしゃいでいた姿、時折せつなげな表情を浮かべる姿、 車窓を眺めている時のどこか虚ろげな表情。 そして、急に広島を歩きたいと言ってきたこと。 「・・・確か、同じようなことがあったな…。」 いつだろう…。 そんなことをぼーっと考えていた時 Trrrr Trrrr Trrrr 「あれっ?電話が…。」 部屋に備え付けの電話が鳴りだした。 カチャッ 「…もしもし。」 「もしもしフロントです、お客様にお電話が入っております、お繋げしてもよろしい でしょうか?」 「はい、お願いします。」 「畏まりました。」 そう言うと、電話口から保留音が流れた。 その保留音がたまたま知っている歌だった、 口ずさんでいて、サビの部分にきたらふっと止まったので、鼻歌も止めた。 「もしもし?」 「・・・」 「…もしもし?どなたですか?」 「・・・今夜、あの高台で待ってる…。」 「えっ?」 電話口でそう告げられると、電話は一方的に切られてしまった。 誰だろう…と最初思っていたが、あの声を僕が聞き間違うわけが無い。 あの電話は優からの電話だ。 でも、何で高台なんだろう…。 僕は夕飯を食べた後、近くの電停へ向かう。 すぐ来た電車に乗って、高台の最寄りの駅へと急いだ。 優は何か大切なことを僕に言おうとしている、そんな気がしていた。 高台へ向かう道は坂ですこしきつかったけど、僕はきついとは感じなかった。 「…はぁはぁ…。」 階段を上りきり、漸く高台についた。 この高台は、僕たちの想い出の高台。 優から告白され、僕も優に告白した想い出の場所。 「…さて…優は…」 そう思い、展望台のほうへ歩いた。 展望台で一人夜景を見ている姿を見つけた。 「・・・・・・優。」 僕が呼ぶと、相手ははっと振り返る。 水銀灯の光でに照らされたのは、今にも泣き出しそうな表情をした優だった。 でも、ふっと笑顔を作って 『・・・やぁ・・・待ってたよ…。』 そう言うと、優は僕に抱きついてきた。 「えっ…?」 突然の優の行動に少し戸惑ってしまったが、僕の胸元から優の嗚咽が聞こえてきた。 僕は優をしっかり抱きしめた。 しばらくして、落ち着きを取り戻しつつある優は、僕の腕から離れた。 『・・・ごめん…キミの顔を見たら、安心しちゃって…。』 「ううん…いいよ…。」 『実はね…キミに伝えたいことがあるんだ…。』 「うん…。」 そう言うと、優は一つ深呼吸をして言い始めた。 『私が広島に行こうと思ったのは、キミの気持ちを確かめたかったからなんだ…。 東京にきて、キミが身近に感じられて私はとても嬉しかった。 でも、キミはどう思っているのかが分からなくなってきた、 身近になりすぎて、キミの事がよく分からなくなってしまった。 だから、もう一度キミの気持ちをこの場所で確かめたかったんだ…。』 優の感じていたもの、それは僕に対して抱いている不安だった。 それが、最近僕が感じていた違和感となって現れていたのであった。 『あっ…』 僕は優を強く抱きしめた。 「僕の気持ちはずっと変わらない…。優を愛してる…。 優の不安な心や気持ち…全部受け止めるって誓うよ…。」 『…ありがとう…嬉しい……』 優の言葉の最後は、涙声で聞き取れなかった。 でも僕は優を信じ、受け止められると強く確信した。 優はそのあとしばらく泣いていたが、やがてふっと顔を上げ 『・・・ありがとう…キミの気持ち…とても嬉しいよ…。』 「うん…さぁ・・・明日、東京に帰ろう・・・」 そういった優は、にっこりと笑った。 何も混ざっていない、心から安心しているという微笑み。 『うん…帰ろう…。』 冷たい北風の吹き抜ける高台、でも心なしか僕は暖かく感じた。 |
〜榊 晶さんあとがき
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| はー…ようやく終りました…。(笑) 七瀬優誕生日記念小説はいかがだったでしょうか? この小説は、榊自身が広島に旅行へ行った時に思いついたネタを元に書きました。 しかし、ただ旅行して、はいお終い。というのはただの旅行記になってしまうので、 榊のページにある優SSの設定(優が上京していること)というのを使いました。 再会し、両想いになり、愛する人の元にいる。 その中での不安感が炸裂してしまった。 特に、優はうまく愛情を表現し、伝えることがあまりうまくない子なので、 余計に不安感がつのってしまい、こんな結果を生んでしまったわけです。 でも、最後に「彼」がそんな優を受け止めると誓い、 優も安心して彼のもとへ「帰った」というわけです。 それでは、ちゃお☆ |
| ちょっと遠回りしてしまったようですけど、互いの気持ちを理解し合うことができたようですね。 二人は心を通わせあうことができたようです。 迷い、悩むところがいかにも二十歳前の、青年らしいです。 遠回りはしましたが、、本当の恋、本当に心を通わせあうことができて本当によかったです。 |
