「はー・・・・・・やっと終わった〜」

担任が終礼を終えて、教室から出て行った瞬間、私は大きく伸びをした。

この学校、作法にうるさいからなぁ・・・・・・。
・・・・・・って、私が選んで入ったから文句は言えないんだけどね。

でも、あと1年の我慢よね。

さってと、それじゃ帰りますか。




・・・・・・あれ?



何ぼーっとしてるんだろ、あの娘。





















綾崎若菜誕生日記念小説
「best friend〜坂城 真夜〜」























「おーい、若菜?」

ぼーっと視線を窓の外に向けている若菜に、声をかける。
でも、若菜は相変わらず、ぼーっとしている。

いつものんびりしている性格だけど、今日は輪をかけて酷い。

目の前で手を振っても、気づかない。
ここまで気づかないとは・・・・・・













しかたない・・・・・・かくなる上は・・・・・・。











私は若菜の背後に回りこみ、


そして






















「!!!・・・きゃあっ!!」




脇腹を突っついてみた。




ふっふっふー、やっぱりここが弱かったか。








「あ・・・あ・・・もうっ!坂城さん!!」

いきなりくすぐられた若菜は、どもりながら私に叱責の目線を向ける。

「何ぼけーっとしてるのよ、とっくに終礼終わったわよ」
「あ・・・・・・あら?」

辺りをきょろきょろと見回し、漸く場の雰囲気をつかんだらしい。

「ほら、時計見てみなよ」

そういって、私は時計を指差す。
その方向に、若菜も目を移す。

「あら・・・・・・大変ですね」

と言って、胸の前でぽんっと手を合わせる。

「と言う割には、大変そうな素振りには見えないんだけど」
「そうでしょうか?」

全く、若菜は相変わらず素で返してくるわね。
若菜と私とは性格が正反対なはずなのに、何故か気が合うのよね。

「さっ若菜、帰ろうよ」
「はい!」

私たちは教室を後にして、廊下をぶらぶら歩く。

さて、何故ここまで若菜がぼけーっとしていたか、私はとても気になった。

「ところで若菜、何か悩み事でもあるの?」
「え?私・・・にですか?」
「ええ、『悩んでいます、相談に乗ってください真夜様〜』って顔に書いてあるわ」
「ええっと・・・・・・そうですか?」

ほえっと、素で返してきたか・・・・・・。
もちろん、そこまで書いているわけがないが、相談に乗ってくださいっていう顔はし
ていた。

「半分冗談だけどね、でも何か悩んでいるなって思うのは本当よ」
「はぁ・・・・・・そうですか」

しばらく若菜は無言で歩いていくが、校舎を出たところで私に声をかけた。

「あの・・・・・・坂城さん」
「な〜に?」
「もし宜しければ・・・・・・相談に乗っていただけませんでしょうか?」

やっぱりね・・・・・・。

「よっし、お姉さんにまっかせなさーい!」
「よろしくお願いいたします」

そう言って、深々と若菜は頭を下げた。

「って!其処までしなくてもいいわよ!他ならぬ若菜のことだもの」
「あっ・・・はい!」




「・・・・・・ふーん」

若菜の相談内容は簡単なものだった。
以前の同級生が、東京にいると言うのが解り、逢いにいくべきかいかざるべきかとい
うこと。
でも、家の躾が厳しい若菜にとっては、難しい問題だと思う。

「私は一度お会いして、ぜひとも御礼をしたいのですが・・・・・・」
「若菜の気持ちは解った、行ってくれば?」
「ええ・・・・・・ですが・・・・・・」
「あーーーーっ!!煮え切らない!!」

私はとうとう切れてしまった。

「若菜はその彼に会いたいの?会いたくないの?」



「私は






















・・・・・・逢いたいです」






















「なら、自分の気持ちが変わらないうちに行ってきなさい!」



「はいっ!!」


























若菜は、その翌日学校を休んだ。
私はおそらく、東京の彼のもとへ行ったのだと思った。

翌日、若菜が登校してきた。

その顔は、どこかふっきれた顔をしていた。

「おはよ、どうだったの?」

そう聞くと、若菜は首を横に振った。

「あらら・・・・・・振られちゃったのか」

そう言うと、また首を横に振った。

「いいえ、いらっしゃらなかったのです」


ずしゃっ


「って、何の解決にもなってないやん!!」
「でも、手紙を残してきました」
「ふーん、なんて書いたの?」

「最初はいろいろ書こうとしましたけど、あの方にご迷惑になるのではないかと思
い、
 あなたに逢いたい・・・・・・とだけ」

・・・・・・それって、一歩間違えばストーカーよ・・・・・・。

「で、それをポストに入れてきて帰ってきた、ってことね」
「はい」

そっか、若菜は吹っ切れたのではなく、『彼』を信じることにしたんだ。
だから、こんな澄んだ綺麗な笑顔をしているんだ。




季節が変わり、京都に夏が訪れたある日曜日。

私は家ですることが無くなり、四条河原町に行った。


「おや?」


交差点のところにいるのは


「わっかな〜!」

私の声を聞いて、若菜がこっちを向く。

「あら坂城さん、こんにちは」
「どうしたの?こんなところで」
「ええ、実は・・・・・・」

そう言って、若菜が話し始めるところで

「お待たせ」

と、若菜の後ろから一人の少年の姿が現れた。
途端に若菜の表情が明るく変わる。
そっか、この人が若菜の想い人なんだ。

「ごめん、待った?」
「いいえ、とんでもないです」

そう言って、若菜はやわらかく笑う。
邪魔者はさっさと立ち去りますか。

「じゃ若菜、またね」
「はい、それでは」

そう言って、私は新京極に向かって歩く。
京都の街を、優しい風が流れいった。



<Story Over>






〜 榊晶さんあとがき〜

えーと、純粋にセンチの短編小説を書くのは、3ヶ月ぶりになりますか。
まぁ、いろいろと忙しかったりしているんで、書いていませんでした。

モバギが欲しいと切実に思っています、はい。

今回のお話は、普段とは違う視点から書いてみました。
ある種、実験作的なところがありますけど。
若菜が東京の「僕」のところへ行くまでに、葛藤があったはずだと思うんです。
こと若菜は、名家「綾崎」の一人娘、しかも厳格な祖父に育てられていたのですか
ら、
尚更でしょう。
その辺の葛藤が、うまく書けていればいいなぁと思っています。

ネタが重い割りには、文章ぺらいのは、いつものことなので・・・・・・。(^_^;;

最後に若菜さん、誕生日おめでとう。




〜今日のお話〜

若菜って、一人で悩むタイプですから、誰かが背中を押してあげないと駄目なんですよね。
彼女も、良い友人を持ったものです。



(2002/09/16)




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