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〜 12通の手紙 一枚の写真 〜



 真奈美の転院が決まった。
 
 転院先は遠方で、これからは会いづらくなると思い。若菜は面会に訪れたのだが、
すぐに真奈美は検査に呼ばれてしまった。
  
「あらっ? 」
 一人病室に取り残された若菜は、真奈美の枕元に1通の手紙を見つけ、
その筆跡にとまどいの表情を浮かべた。
「あの方からの手紙… 」
 12人に届いた最後の手紙。知りたくても知る事の出来ない彼の想い。
 彼は自分以外の少女にどんな想いを持っていたのだろう。
 この恋の答えの一片が目の前に、禁断の果実が目の前にある。

 若菜は自分でも気づかないうちに手紙を手にしていた。
「わたくしったら何を… 」
 我に返り、震える手で手紙を戻そうとした拍子に、ヒラリと何かが封筒から零れた。
「あっ、いけない… 」
 若菜は慌てて、それを拾い上げ、その場に凍りつく。
 そこに、優しい笑顔といとしげな眼差しを向ける彼が居た。
 若菜が望み、夢にまで見た彼の姿。
 しかし、その眼差しに見守られて微笑んでいるのは、自分では無く真奈美なのだ。
 
 自分には一度も向けられた事の無い眼差し。
 もぎ取ってしまった果実。その味は、苦くせつない。
「莫迦みたい… わたくし、フラれていましたのね… あの方の大切なヒトには成れ
なかったのですね」
 あの日お会いするのは、わたくしとお別れする為。それなのに、わたくしったら…。
 若菜は写真を真奈美のベッドの上に置くと、逃げるように病室を後にした。

 転院の当日。

「真奈美さん、お体に気を付けて」
 若菜にはそう声を掛けるのが、精一杯だった。
 しかし、その声が聞こえているだろうにも関わらず。真奈美は何の反応も示さないまま、
 若菜の前を通り過ぎていく。

 そんな真奈美から、若菜は思わず目を逸らした。
 真奈美さん、今のあなたの心には苦しみしかないのですね。
 でも、一時でもあの方の愛を受けたあなたに、わたくしは嫉妬してしまう。
 たとえ苦しみと絶望しか残らないとしても、わたくしはあの方の愛が欲しかった。

 目の前の景色がだんだんぼやけてくる。
「やだ、涙が。もう泣かないって… 誓ったのに… 」
 だが、もう若菜に溢れ出る涙を止める事は出来なかった。
 ねぇ、あなた。
 今日くらいは泣いてもいいですよね。あなたとの恋が終わってしまったのだから。






酸素泥棒さんあとがき
あの日届いた12通の手紙。それは全て同じだったのでしょうか?
その中に1通だけ、「特別」が混ざっていた。
そうは思いませんか…



〜今日のお話〜

 酸素泥棒さんより今日もまた素敵な作品を頂きました。
おおきにさんです♪
早速、拝見させていただきましたが、いやはや、これはまた凄い内容の話ですな。
若菜の嫉妬、人間として当然持っている妬みや羨みの話ですね。
私はこの小説を読んで、「女としての業」を感じました。

いや、これはこれでいいと思いますよ。
若菜も人間です。好きな男が他の女と一緒に写っている写真を見て、
平常心を保てるわけがないでしょう。
第一、これでなんとも思わないようでは、本当に彼のことを愛しているとは言えません。
愛しているからこそ、妬みや羨みの煩悩が生ずるのです。
ずっと人間らしい心を持っている若菜。
私たち人間の愛欲の深さを感じました。

人間から煩悩は永久に無くならないと思いますが、煩悩があるからこそ
人間であるともいえると、私は思います。愛もまたしかりです。



(2000/08/18)




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