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Snowball fallin’on my head





「ふぅ…ちょっと早く来すぎたかなぁ…」
明日香は携帯電話を取りだし、時刻を見る。

256色カラーの小さなモニターの上にデジタル表示で[02:14 09:33]と表示されていた。「…まぁ、今日は雪がもっとひどくなるって森田さんも言ってたし…今朝のニュースだと成田や羽田はすでに全便ストップらしいから…まぁ…用心するに越した事はないけどね…」

明日香はバス停を離れ、雪の積もった道をきゅっ、きゅっ、と音を鳴らしながら、待ち合わせ場所の映画館前に向かった。






「…マジかよ…もう30分は遅れているぜ…」

少年は待てど待てど来ないバスといてつく寒さの性でかなり苛立っていた。

少年が駅に向かうまでの道のりは歩いてゆうに2時間以上、しかもこの大雪の中を歩くことはまさしく自殺行為であった。

だから少年は仕方がなくバスを待っていた。これでも少年はこういう自体を予測してか、これでもいつもよりもかなり早く家を出たのであった。

「くっそぉ…よりによって…なんで今日なんだよ…この大雪はぁ…」

少年が愚痴をこぼす度に吐く息はこれ以上ないほど白かった。

「仕方ないか…携帯で一回連絡しとくか…」

少年は携帯電話をポケットから取り出そうとした…だが、いつも左ポケットに入れておいてあるはずの携帯電話が今日に限ってないのであった。

「しまったぁ…昨日充電してそのままにしておいたんだった…」

仕方なく少年は近くの電話ボックスまで向かおうと辺りを見渡す。…と、その時、



ブロロロ…



バスの鈍い排気音が近づいてきた。

「…はーーーーーーぁ…やっとかよ…電話は後だな…まずは駅に行く方が先だ…」

少年はひときわ長い白いため息をついた後、ようやくきたバスに乗り込んだのであった。






「駄目だぁ…やっぱり出ないやぁ……ふぅ…やっぱり電車遅れているのかなぁ…ちょっとI−MODEで調べてみよっと…」

明日香は再び携帯電話を取り出してI−MODEを起動させる。画面上の地球が回転し、情報を読み込んでいく。

本当なら少年と携帯で連絡を取れればいいのに…と明日香は思った。だが、こうして連絡の取れない以上、今得られる情報から少年の現状をシミュレートするしかないのである。

「…あ、読みこみ終わった・・・ええっ!!??」

全ての情報を読みこみ、画面上に出た情報に、明日香は驚きの声をあげた。






少年が駅に着いたとき、駅の中はひどく騒然としていた。公衆電話を待つ人の列、駅員に詰め寄る中年女性、少年はその光景を見て大体の予測はついた。

「ん?君は…?」

と、少年を呼ぶ声。振り向くとそこには一人の駅員がいた。

「あ、榊さん。この状況ってやっぱり…?」

「…ああ、上下線とも運行見合わせ。1時間も前からずっとこれさ。しかも運行再会の見通しなし。参るよなぁ…まったく。」

榊と呼ばれた駅員は深いため息をついて少年にぼやいた。

「マジかよ…くっそぉぉぉ…やっとの思いでここまで来たのによぉ!!」

少年は悔しさと苛立ちと怒りで、近くの柱に思いっきり拳を打ちつけた。柱を叩いた鈍い音が駅中に広まり、周囲は一瞬ではあるが、揃って少年の方を見るが、すぐにまたそっぽを向く。

「ふぅ…なにか、急ぎの事情があるみたいだね…僕でよければ力になるよ。」

「…すいません…ちょっと苛立っていたみたいで…実は…」






「…そっかぁ…じゃあ今日、どうしても横浜に…わかった…ちょっと待っててもらっていいかい?」

榊は駅員室に走り、すぐさま駅周辺の地図と分厚い本を持って戻って来た。

「お待たせ。それで、これを見てもらってくれないか?」

榊は広げた地図から、1つの駅を指差した。

「ここから歩いて10分の所にある地下鉄をつかって乗り継ぐといい。ただ、2回ある乗換えがかなり複雑なんだ。予算もかなりかかる。それでよければ横浜までは行けるけど…」

少年の目に希望が灯る。

「はい!!もちろんです!!早速教えてください!!榊さん、本当にありがとうございます!!…あ、その前に…」

少年は深深と頭を下げるた後、榊にある懇願をした。






「…あの時…あの人はこんな気持ちで映画館の前で待ってたのかなぁ…。…きっと…来てくれるよね…。」

明日香は降り積もる雪を見上げ、傘もささずにただただ映画館の前で待ちつづけた。明日香の小さな頭の上に積もる雪よりも、心の中に積もる切なさという雪の方が明日香にとっては何倍も冷たく感じた。

「ふぅ…今日に限ってこの雪とは…私もついていないなぁ…」

明日香の後ろから男性の声が聞こえた。明日香はその声の方向を向く。そこには腰こそ曲がっていないものの顔には深いしわを多く作った60すぎの男性であった。

「この雪じゃと…もう誰も来ないだろうなぁ…お嬢ちゃんも、今日はこれ以上ひどくならないうちに帰ったほうがいい。」

その言葉を聞いて明日香はハッとする。

「いえ!!私…待ちます!!あの人は…絶対に来るから…絶対に…」

最後のほうは明日香自信も核心が持てなくなり、言葉に詰まった。

「あの時、約束を破ったのは自分のほうだから…」その事が明日香の脳裏に強くあったからであった。

「…なにか事情がありそうだね…」

「…ええ、詳しくは言えないのですが…この映画を…ある人と一緒に見ないと…駄目なんです…。」

明日香が寒さと切なさに震えながら途切れ途切れに話すと、男性は黙って近くの自動販売機からポタージュを買い、明日香に手渡す。

「…わかった。今日は君のその待ち人が来るまで閉館しないでおこう。ただ、風邪を引くといけない。これで少し身体を温めなさい。」

男性は明日香の頭と肩に積もった雪を払いながらにっこりと笑った。

「…はい!!ありがとうごさいます!!いただきます♪」

男性の言葉と好意に明日香は元気を取り戻す。その時、流行歌のサビが明日香のポケットから流れ出した。携帯電話の着信音であった。

「…ん?…誰からかなぁ?」

明日香は着信音から少年でないとわかっているが、なぜか心臓が高鳴った。明日香はすぐさま携帯に出る。

「もしもし…」

「もしもし!!明日香!!俺だよ!!ごめん!!今どこにいる!?」

その声は間違いなく少年であった。明日香は少年の声を聞いて感激で一杯になり、心に積もった切なさという雪が溶け始めた。

「…よかった…グスッ…」

明日香は一言、そう洩らすと目から止めど無く涙が溢れてきた。

「…明日香?」

「あ、ううん、なんでもない…ごめんね…私は映画館の前で待ってるから…何時間遅れてもいいから…絶対に来て…お願い!!」

明日香は今の正直な気持ち、思いを全て電話の向こうの少年に向けて送った。

「うん、わかった!!あ、これ知り合いの電話なんだ。だからもう切るけど…絶対に行くから待ってて!!」




少年からの電話はそこで途絶えた。




「…よかった…本当に…」

明日香は受話器を抱きしめながら少し泣いた。そして涙を拭うと満面の笑顔を男性に向ける。

「よかったな…お嬢ちゃん…よし!!今日は二人のための貸し切りだ!!これは整備にも力を入れないとな!!」

男性はすぐさまチケット売り場のシャッターを閉めて館内へとパタパタ走っていった。

「ありがとう…おじさん…」

明日香は開けっぱなしの従業員口に深深と頭を下げると、真上にある映画の看板を見た。




やっと…やっとだね…あの時の約束…やっと…






少女の果たせなかった想いは白い雪のように積もっていた…だけど…二人の春はきっともうすぐ…



この幸せ…あなたにも届きます様に…



…Happy Valentine For You Too…





〜 龍切 晶さんあとがき〜

龍切です。どうもです。

今日昼間にちらつく粉雪を見て(…今日はバレンタインかぁ…しかも雪…愛しい人を
待ちながらチョコを抱えている女性ってきっと一途なんだろうなぁ…)
と思っていたらSS書きたい衝動にかられまして…

という訳でいきなりですがバレンタインSSをお送り致しますです。

かなりハイテンション(このシチュエーションが以上に書きたい!!)な中で作った
ので暴走気味かも…

掲載等は自由です…もう今日はこの思いを止められなかった物で…。

では、失礼しました。

FROM 龍切 晶



〜今日のお話〜

恋する乙女、そして青年。素敵ですね。



(2001/02/14)




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