「Sentimental
Graffiti if…… 〜えみるの娘達〜」![]()
| …………子供の頃から、ずっと夢見ていた。 「運命の人と結婚をする。」 私を暖かく包んでくれて、時には甘えん坊な彼。 隣りに立つのは、タキシードを着て、がちがちに緊張している彼。 そんな彼を見て、私はくすりと微笑う。 神父さんの前に立ち、生涯をともにすると誓い そして…… 私達は、 誓いのキスをした。 「Sentimental Graffiti if…… 〜えみるの娘達〜」 ……そんな結婚式があったのは、もう10年以上も前。 私は主婦になっていた。 そして、可愛い娘達と愛する夫とともに、幸せな生活を送っている。 「私もコンクール前でもっと練習したいの!」 「あたしだって、今度のライブの練習がしたいんだ!!」 睨みあってケンカしているのは、双子の姉の晶と妹の千恵だった。 姉の晶はゆるやかなウェーブのかかった髪に、大きなバンダナをつけている。 背もクラスの中では高いほうで、一目見ると高校生に間違われるくらいだ。 小さい頃からヴァイオリンなどの弦楽器を習っていて、 演奏会などにもたびたび出演している。 一方、長い髪をポニーテールにしているのが妹の千恵だ。 千恵も小さい頃から、父親のギターを真似して弾いていた。 こちらも一目では中学生には見えないくらい、大人びた雰囲気を持っている。 夫の友人のバンドにしばしば呼ばれて演奏している。 二人がもめているのは、こんな理由があった。 私達の家には防音された地下室があり、二人が交代で使っていた。 (私も娘のいない間に、近所の星野さんの奥さんとカラオケの練習をするけどね。) だけど、二人とも来週に開催されるコンテストのために、 夕食までのあいだに少しでも練習をしたいと思っていた。 そろそろ取っ組み合いになりそうだと思い、私が止めに入った。 「こらっ!二人とも離れなさい!!」 「「!…ママ(母さん)……」」 私の一声で、二人はこちらを向いた。 「だって、千恵が練習すると、私が練習できないんだもの。」 「それはこっちだって同じさ!」 そういって、またにらみ合った。 私はため息を一つついて、二人にこういった。 「……わかった。二人とも今日は練習やめなさい。」 「「ええっ!?」」 私の言葉に二人は驚いていた。 「ケンカしているところで、練習に身が入ると思えないよ。 だから、今日は練習止めなさい。」 「「………はい。」」 そう言うと、二人は渋い顔をしてそれぞれの部屋へ帰っていった。 一生懸命やるのはいいんだけど、もう少し仲良くやってほしいなぁ……。 さて、私も夕食の準備に戻らなくちゃね。 私はキッチンへと戻り、準備に取り掛かった。 しばらくすると、晶がすまなさそうな顔をしてキッチンへやってきた。 「ママ……。」 「ん?どうしたの晶。」 「その……ごめんなさい。」 「何が?」 「千恵と地下室のことでケンカして……。」 「それだったら、謝る相手が違うんじゃないの?」 「…………。」 「ママに謝るんじゃなくて、千恵に謝らなきゃ……ね?」 「うん……。」 「よっし!それじゃ、夕食の時に謝ろうか。」 「うん。」 そう頷くと、晶は少し気持ちが晴れた顔をして、部屋へ戻っていった。 「あのさ、……母さん。」 晶と入れ替えに今度は千恵が入ってきた。 「千恵?どうしたの?」 「う、うん……あのさ。」 私は夕食の準備をしながら、千恵の言葉を待った。 千恵は言い出そうとするけど、なかなか言い出せないでいる。 そのうち私の手伝いをしはじめた。 しばらくすると、ぼそっと呟いた。 「……母さん、晶にさ、地下室つかっていいって言っておいてよ。」 「でも、千恵は?」 私は一旦手を止めて、千恵の目線に腰を落した。 千恵は少し目線を逸らしたけど、すぐに私と目を合わせた。 「……いいんだ、今日はあまりうまく弾けないみたいだから。」 「そっか……それじゃ、今日は晶の練習をみよっか。」 「へっ?」 千恵は、突然の私の提案に目を丸くした。 「ママは音楽はよく分からないけど、どこか通じるところがあると思うの。」 「……うん。」 「だから、千恵も晶の演奏からなにか盗んじゃえ!」 と、私はあっけらかんと言ってやった。 千恵はそう言うと、ふっと笑った。 「そうだね……たまには晶のヴァイオリンを聴いてみようかな。」 「よっし!それじゃ、御飯の準備しちゃお!」 「うん!」 千恵は元気よく頷き、再び私の手伝いを始めた。 二人とも勝気な性格で、たびたび衝突することもあるけど、 根は二人ともとても優しい。 おかげで私もときどき楽をさせてもらっているのよね。 ……それはともかく 『夕飯の片付けがおわったら、晶のミニコンサートね!』 久しぶりに晶のヴァイオリンを聴けるのは楽しみだわ。 なんせ、普段の練習に私達は入れてくれないから、 どんな練習をしているか、私にはわからない。 「ただいま〜」 玄関の方で、男性の声がした。 その声が家中に渡ると、どたどたという音が玄関の方へ集まった。 「おかえり!」 「おかえりなさい!」 「おう、ただいま!」 少し遅れて私が声をかける。 「おかえりなさい、お疲れさま。」 「ただいま。」 私が微笑うと、彼も微笑ってくれた。 彼は両手に晶と千恵を連れて、階段を上っていった。 「すぐにご飯だよ〜。」 「「は〜い!」」」 私は声をかけて、キッチンへ戻っていった。 「ねぇ、今日は晶のヴァイオリンを聴きたいわ。」 突然の私の提言に、晶は目を丸くした。 「へ?」 「そうだな、パパも聴きたいな。」 彼も賛同してくれる。 晶は少し考えて、やがて 「いいわよ。」 といった。 「やっほぅ!それじゃ早く片付け終わらせましょ!」 片づけをいつもより早く終わらせて、私達は地下室へ入る。 そこには、普段着でヴァイオリンを弾く準備をしている晶がいた。 その傍らには晶にヴァイオリンを教えた彼がいた。 私の提案のあと、久しぶりに晶と演奏したいと張り切っている。 心なしか、晶も楽しそうに調律している。 やがて、二人とも調律が終わりヴァイオリンを構えた。 ゆっくりと演奏が始まる。 千恵も曲に耳を傾けていた。 二人の演奏は一つになり、時にはソロで聴かせてくれた。 やがて演奏が終わる。 「すごいわ二人とも!」 「へぇ……」 二人はありがとうという気持ちで会釈をする。 「あたしも混ざる!」 今度は千恵がギターを持ち出して、二人に並ぶ。 「千恵だけずるいよぉ、私も混ざる!」 そして、私はキーボードを準備して三人の輪に加わった。 こうして四人の演奏が始まった。 ヴァイオリンとギター、そして私のキーボード。 あまり一緒に演奏する機会のない楽器たち。 でも、 音楽を楽しむという点は、 同じこと。 「ねぇ晶。」 「何?」 「……楽しいよな。」 「千恵も?」 「うん。」 「私も……ギターがこんなにヴァイオリンに合うなんて思わなかったわ。」 「あたしも思ってた。」 演奏しながら、声を掛け合う二人。 「こんど、一緒に練習…………しようね。」 「ああ……。」 二人とも、楽しそうに演奏している。 そんな二人を見て、とてもほほえましく思う。 運命のダーリンと結婚して、子どもにも恵まれて…… 私は……えみりゅんはしあわせりゅん。 |
榊 晶さんあとがき
|
というわけで、いよいよ12人出揃いました。 えみるは2だと、面倒見のいいお姉さんぶりを発揮していました。 だから、母親になっても面倒見のよさはかわらないんじゃないかなぁ……と思いまし た。 さて、12作に渡ってお送りしてきました誕生日記念小説ですが、 来月からはいよいよ二巡目に入ります。 今のところネタは少し考えていますが、書いている暇があるかどうか……。 最後になりましたが、榊の作品を掲載していただいたKAZさんと 作品を読んでいただいた皆様に、精一杯の感謝の気持ちをこめて、 筆をおきたいと思います。 それでは! 榊 晶拝 |
| 今日もまた、面白い話をありがとうございました。 あのえみりゅんも、こんなに大人になるんですね〜。 やはり、「母」になるということはそういうことなのでしょう。 |
