千恵BirthdayPresent小説
「One Day」
| あたしが上京してもう半年、だいぶ東京の街にも慣れてきた。 今日は久々にあいつの家に行ってみるか…。 最初はあいつの家まで行くのに、迷ったっけ…。 ふぅ…ついたついた、さてあいつはいるかな? あたしは呼び鈴を鳴らした。 「はーい…」 『よっ!』 「ち、千恵!?」 突然のあたしの来訪が嬉しいのか、あいつはとても驚いていた。 「ど、どうしたの?突然…。」 『何いってんだよ、かわいい彼女が遊びに来たんじゃないか。』 「うーん…とりあえず、中に入りなよ。」 『うん、お邪魔しまーす。』 中に入って、あたしが驚いたのは、あいつの生活の様子だった…。 『何これ…。』 「あぁ、最近レポートとバイトが忙しくて、部屋を掃除する暇が無くてね…、今朝方 までやってて、さっき起きたんだよ。」 『それでも、これはひどすぎるよ…。』 「あはは…確かにね…。」 あたしは少し考えて 『分かった、じゃ今日はあんたの家を掃除してあげるよ!』 「えっ・・・?」 あいつは思いっきり目が点になった。 『だーかーら!掃除してあげるって言ってんの!』 「え…でも悪いよ…」 『遠慮しないで!厚意は素直に受けるもんだよ!』 「う、うん…じゃ、お言葉に甘えて…」 『あんたはその間に少し寝てなよ、どうせレポートだのバイトで寝てないんだろ?』 「うん、…悪いね…。」 『いいんだよ!あたしがやりたいからやるんだから!』 「うん…ありがとう、じゃ少し寝かしてもらうね。」 そういって、あいつは自分の部屋へ引っ込んだ。 さてと…どこから手をつけるかな? 部屋は散らかりたい放題、洗濯物は溜まってる、流しは…使ってないみたい…。 てことは、食事もろくにとってないって事か…。 …ったく!しょうがないなぁ…、あたしがいなかったらどうなってることやら…。 じゃ、片っ端から片付けますか。 ふぅ…とりあえず、こんなもんかな? 古雑誌は縛ってまとめておいてっと。 どうでもいいけど、ここまで溜めこむのもすごいよなぁ…。 で、洗濯物は…って結構少なかったなぁ…。 そういえば、昔からあいつはあまり服持っている気配が無かったよなぁ…。 いつも同じような服だったけど、ここまで無いとは…。 さて…そろそろ起こすかな? ふふっ…寝てる寝てる…。 ・・・そういえば、あいつの寝顔ってあまり見たことないよなぁ…。 ・・・・・・いたずらしちゃえ。 あたしは、あいつの頬を触ってみる。 ふにふに ふにふにふに 「・・・・・う・・・・・・ん。」 気づかない…完全に熟睡してる…、よっぽど疲れてるんだなぁ…。 ・・・もう少し、寝かしといてあげるか。 じゃ、あたしは夕食を作るか…。 『さて、冷蔵庫の中身は…っと。』 流しをあまり使ってないところをみて、あまり無いだろうと思っていた。 『・・・え?』 それはあたしの予想を遥かに凌駕していた。 冷蔵庫の中は、食品どころかミネラルウォーターのボトル1本が入っていただけ。 本当にどういう生活をしているのか、すごく謎になった。 『はぁ〜…全くどうしようもないね。』 半ばあきれつつも、このままだと倒れてしまうのではないか?とあいつのことが心配 になる。 それじゃ、少し買い物に行ってこよう。 『ふぅ…ただいま…っと。』 そう言っても、声は返ってこない。 奥の部屋では、あいつが安らかな寝息とともに眠っている。 もう少しそっとして置いてあげよう。 『さて…と、これから作ればちょうど夕食時だね。』 そうつぶやき、あたしは腕まくりをした。 今日の献立はカレーとサラダ、あたしの自信のある料理だ。 インスタントのカップばかりあったから、野菜を摂ってないのは見えている。 上京してから、あたしの料理の腕は確実に上がっていた。 上京したての頃は、包丁もろくに扱えなくて大変だったっけ。 でも将来の事とか考えて、今できなければ将来もっとできない!と思い、 母さんが様子を見に来たときに、少し教えてもらった。 鍋から湯気とともにカレーのいい香りがしてきた。 「・・・おはよう、千恵。」 その香りに誘われてきたように、あいつが起きてきた。 『おはよ、よく眠ってたね。』 「おかげさまで、ぐっすりと眠れたよ。」 『そっか、夕飯できてるから、一緒に食べよう。』 あいつは申し訳なさそうな顔をしながら食卓へ来た。 『「いただきます」』 そういえば2人で一緒に食事することって、あんまりなかったよなぁ…。 あっ、ちゃんとサラダも食べてる。 でも、カレーはどうなのかな? 『・・・どうかな?』 あいつは笑顔で 「うん、美味しいよ!」 ふぅ…よかった。 このカレーはあたしの中で最高の出来だったからね。 もし、美味しくないって言われたら、たぶん立ち直れないだろうなぁ…。 「ごちそうさまでした。」 『おそまつさまでした。』 あいつは3杯もおかわりした。 かなり量を作ったのに鍋はもう空っぽだった。 帰り際、あいつは駅まで送るといったが、あたしは玄関先でいいと申し出た。 福岡に逢いに来て帰るときの辛さは、東京に来てからも少しも変わらない。 駅まで送ってもらったら、あたしは帰るに帰れなくなる。そう思ったから。 「千恵…ありがとな…。」 『いいんだよ、あたしが好きでやったんだから。』 「…レポート終わったら、どこか行こうな。」 『うん、待ってる…。それじゃおやすみ。』 そういって、あたしはあいつの部屋を後にしようとした。 そのとき 『んっ・・・・』 不意打ちのキス。 あいつは照れながら 「今日のお礼、本当にありがとう。」 『…ったく、いっつも突然すぎるんだよなぁ…。』 「ごめん…じゃ、おやすみ。」 『ん…、おやすみ。』 駅への道を歩く、吹き抜ける風が気持ちいい。 『・・・これからたまに、あいつの家の掃除にいってあげようかな?』 あたしは、唇に残るキスの感触を思い出しながらつぶやいた。 |
榊晶さんあとがき
| お読みいただいてありがとうございます。 さて、今回のSSは千恵姉SSです。 このネタは、ある日の昼食にカップめんを食べているときに思いつきました。 「あんた、カップめんばかりで大丈夫なのか? じゃ私が何か作るよ!」 と言う千恵姉が頭に浮かんだので、そのまま書きました。 それでは、ちゃお☆ 文責:榊 晶(さかきあきら)/Akira Sakaki |
| 榊 晶さんより、千恵の誕生日プレゼント小説を頂きました。 彼の家までやってきてご飯まで作ってあげるとは、今日の千恵はなかなか行動的ですね。 それにしても分からないのが、彼の日頃の暮らしようです。いったい、どうやって日々暮らしているのでしょうか? 千恵が謎を解いてくれるかと思いきや、ますますもって謎が深まってしまいましたよ。 ふいのKissには驚きましたが、照れる千恵も可愛いですね。 |
