〜Present for you〜
第3話「私にできること」
| アルバイトを始めてから、私の放課後は充実したものとなってきた。 授業が終わってから、すぐにアルバイト先の喫茶店へ向かい、帰ってからヴァイオリンの練習、 そんな生活をもう1週間ほど続けている。 不思議と嫌と感じないし、むしろ今の方が楽しいと思っているほど。 そこで、アルバイトの終わる前日、私は一足先に喫茶店に向かい、マスターに相談した。 『・・・というわけなんですけど…。』 マスターは、にっこりと微笑んで 「うん、ぼくは構わないよ。」 『ありがとうございます。』 ガチャッ、カランカラン… 「こんにちは〜」 そこへ、いつも通りの時間で麻衣が来た。 「あきらぁ…私を置いて先に行っちゃうなんてぇ…」 麻衣はちょっとふくれ面をして私のほうへ来た。 『ごめんね、ちょっとマスターに相談してたの』 「え?何の相談?」 麻衣は、首を傾げ聞いてきた。 『うん、実はね…。』 私がそう言った瞬間、 「あ、明日で終わりだっけ…つまんないなぁ…またマスターと2人きりかぁ…」 「おいおい、ぼくと2人きりじゃ不満かい?」 カウンターにいたマスターは苦笑していた。 『違うのよ、最初は1週間の約束だったんだけどね… 楽しくなってきたところで辞めるのも嫌だから、1か月に延長してもらったのよ。』 そういうと、麻衣は急に笑顔になり 「ええっ!本当?やったぁ!!」 麻衣は身体全体で嬉しさを表現するように飛び跳ねる。 『そういうわけで、またよろしくね!』 「うん!」 「さて、そろそろ準備してくれないかな?」 マスターが絶妙のタイミングで入ってきてくれた。これ以上麻衣が飛び跳ねたら、 後の片付けが大変そう…。 仕事は1週間やってきて結構要領を得てきた。 トレーの扱いにも慣れてきたし、でも麻衣のようにはまだまだいかないわ、それでもやっぱり 足手まといになるのだけは嫌よね。 そんなことを思っていると、窓際のテーブルにいた麻衣がこっちを見ていた。 「あきらぁ…ちょっと手伝ってぇ…」 そこには大量の空になった食器があった。どれだけ注文するとこれだけの量になる のだろう…そう思っているのも束の間、早く片付けなければ、あとのお客さんが入れ ない。 『じゃぁ、手分けして運びましょう。』 「うん、ありがとう。」 そう言って、私と麻衣で分けて片付けた。 途中から手の空いたマスターが手伝ってくれて、本当に助かった。 正直、これだけの量を私たちだけではちょっと辛かった。 「じゃぁ、麻衣ちゃんと遠藤さん、洗い物してくれるかな?お店はぼくが見てるから。」 「は〜い!」 『分かりました。』 マスターから皿洗いを指示されて、私たちは奥の流しへと向かった。 「あきらぁ」 お皿を洗いつつ、麻衣が話し掛けてきた。 『何?』 「バイト…楽しい?」 『楽しいわよ、どうして?』 「うん、…ふふっ、なんかあきらのこういう姿って新鮮だなぁ…って思ってね…。」 『そうかしら?まぁ、あまりこういったことはやらないわね…。』 とはいったものの、実はここ最近、家での食器洗いは私がやっていた。 食器洗いく らい出来ないと喫茶店のバイトは出来ないだろうなぁ…と思って。 ましてや将来、私の仕事になるかもしれないし…でも、ちゃんとダンナ様に分担させ なきゃね…ふふふっ。 「…あきら?」 『…えっ?』 麻衣の一言で私は現実に戻された。 「大丈夫?なんかぼーっとしてたよ?」 『え?う、うん。』 【…結婚した後の私の姿を想像してました】…なんて言えないわよね…。 『そういえば、麻衣って何でバイトしてるの?』 そう聞くと、麻衣はちょっと驚いた。 「えっ?んー…お小遣い稼ぎっていうのもあるんだけどね…本当の理由はちょっと違 うんだ…。」 『そうなの?』 「うん、…笑わないで聞いてくれる?」 照れた顔の麻衣が聞いてきた。 『もちろんよ。』 そういうと麻衣は頬を赤らめつつ、ぽそぽそと話しはじめた。 「実はね、私…中学から付き合っている人がいてね、来月その人の誕生日だから、 その人と一緒に旅行に行こうと思って、頑張ってるんだ…。」 『そうなの…』 「…変…かな?」 麻衣はおそるおそる聞いてきた、 『素敵じゃない、頑張りなさいよ!』 そういうと、照れ笑いをして 「うん…ありがと。」 麻衣の意外な一面を見られた、好きな人の為に頑張れる、そんな麻衣は輝いていた。 私の場合は? アイツはいつも私に逢いに長崎まで来てくれる、でも私はアイツの為になにかして あげたかな? ううん…悔しいけど私は何もしてあげていない、むしろ私の為に大変な思いをさせ ている…、今アルバイトをしてアイツの苦労が少しだけ分かった気がした。 長崎と東京を往復するだけでも大変なのに、アイツは疲れた表情も出さないで私と 付き合ってくれる、私に何ができるんだろう…。 「あ・き・ら!」 『…えっ?』 「もぉ〜またぼーっとして…さっきから変だぞっ!」 また、麻衣の一言で現実に戻された。 『…ごめん、これで最後ね。』 「うん、さっさとやっちゃおうよ!」 結局、皿洗いで今日のバイトは終わってしまった。 家に帰り、私はベッドで物思いに耽った。 『…私が…アイツにできることって…。』 つづく |
榊晶さんあとがき
| というわけで、晶様は結局一月アルバイトをやることにしました。 前回の晶様ポニーテールはかなり好評だったようです。 最初はギャグで書く予定だったけど、結局ほのぼの系になってしまいました。 一つ分かったことは、榊はギャグはかけない…と言うことが分かりました…。(爆) それでは、また次回でお会いしましょう! |
| 榊 晶さんより、晶の小説を頂きました。 晶は、自分では気づいていないようですが、心のうちではアルバイトが 楽しくてしょうがないようですね。 バイトに対する姿勢もしっかりしていますし、このあたりに晶の、 引き受けたからには真剣に頑張ろうという姿勢が見えます。 それに、晶の心の中ではなにやら、とある思いがあるようです。 次回連載をお楽しみに。 |
