「恋がひとつ消えてしまったの」
| 何の変哲も無いいつもの光景。そこには2年前の私がいた。 「恋がひとつ消えてしまったの」 私の名前は杉原真奈美。高校卒業と同時に高松から上京して、今は東京で暮らして いる。 病弱で、あまり人と接することが出来なかった私は、想い出のあの人との再会で変 わった。 それからは少しづつ学校へ行き、東京の大学への進学も決めた。 両親から一人暮らしを許されるくらいになるまで身体もよくなり、私は普通の大学生 をしている。 ある日、講義が終わった後に買い物へ行こうと彼から誘われた。 しかし、最後の講義が休講となってしまい、私は暇をもてあそんでいた。 仕方なくカフェテリアでお茶を飲んでいたけど、一向に時間は進まない。 無理ないよね……一ヶ月ぶりのデートなんだから……。 あー……早く一時間くらい過ぎないかなぁ……。 結局、カフェテリアには30分といなかった。 そのまま待ち合わせ場所である大学の正門へ向かう。 彼が来るまで、少なくともあと20分といったところだろうか。 ふと、私の視線が一人の少女に止まる。 それはバス停で佇んでいる少女だった。 セーラー服に通学カバン、髪の毛はセミロングのいかにも高校生っぽい格好で、 片方の手には可愛らしい封筒を持っていた。 バスを待っているのかと思ったけど、どうもそうじゃないみたい。 何本もバスを見送っていた。 「もしかして……」 私の勘が鋭く反応した。 このバス停で降りてくる人に告白しようとしてるのね。 ふふっ……私にもわかるよ……そのキモチ。 「……きっと、あなたの想いは通じるよ。」 そう呟いていた。 しばらく寒空の中、私は彼女の姿を追っていた。 彼女は手をさすりながらまだ来ない彼を待っていた。 私もまだ来ない彼を待っていた。もう遅い遅い遅い遅い。 どっちも遅いっ! そんな時、一台のバスがとまった。 一瞬バスの陰になってしまい、彼女の姿は見えなくなる。 しかし、次の瞬間私が見た彼女は、ただ呆然と立ち尽くしている姿だった。 私は、呆然としている彼女の視線を追った。 そこには、別の女性と親しげに手を繋いで歩く男の人がいた。 彼女は手に持っていた手紙を胸に抱きしめながら、静かに泣いていた。 その姿は、2年前の私そのものだった。 2年前、彼に内緒で高松から一人上京したとき、偶然にも彼の姿を見かけた。 でも彼一人ではなく、その傍らには私とは違う綺麗な女性がいた。 私は、溢れる涙で彼の姿を追うことが出来なかった。 そんな2年前の私を見ていた私は、涙がこぼれた。 苦しくて、やるせなくて、何も言えなくて、ただ涙を流し佇むだけ。 忘れかけていたあの時が、あの子を通して甦ってしまった。 私はその場に蹲り、一人泣いていた。 嫌というほど後悔しつづけたことが、頭の中に響きわたる。 もう嫌なのに。もう忘れたいのに。 もう二度と思い出したくないのに……。 「ごめん!待った?」 不意に声をかけられる。 私は顔を上げ、声のする方に顔を向けた。 「ま、真奈美……どうしたの?何で泣いてるの?」 その声の主は、彼だった。 私は彼の胸に抱きついて泣いた。 彼はそんな私を抱きとめてくれた。 彼の胸は走ってきたのか、どきどきと高鳴り、とても熱かった。 でも、とても暖かかった。 「あのね……恋が一つ……………消えちゃったんだ。」 「へ?」 突然の私の言葉に、彼は驚いた。 「2年前の私……そのままだったんだ……。」 「そっか…………。」 そう言うと、彼は優しく私を抱きしめてくれた。 やがて、落ち着いた私は彼と手を繋ぎ、街へと歩いていった。 彼は言ってくれた。 「あの子の次の恋…………叶うといいね。」 「うん……。」 あれから私は閉じこもってしまったけど、彼から告白されて新しい恋を見つけた。 だから、あなたも私たちみたいに新しい恋を見つけてほしいな……。 |
〜榊 晶さんあとがき
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| ……こんなの真奈美さんじゃなーーーーーーーーーーーーい!!!! …………ごめんなさい。(平伏) Special thanks vvv:龍切 晶様 榊 晶拝 |
| さて、物語の感想ですが、私は、こんな話もあってもよいと思いますよ。 センチは純粋な、十二の初恋物語ですが、初恋でなくとも恋は恋。 恋はいつでも純粋なものです。 それにしても、榊晶さんは流石に純粋な物語がお得意のようですね。 榊晶さんの作風は、優しい雰囲気が魅力だと思います。 それから、この物語は「今の彼と思い出の彼が同じ人なのがHappyEnding」 なのだそうですね。 ですが、私は二人は別人だったとしてもHappyEndingだと思っています。 勿論、真奈美も、別の彼と結ばれ、幸せに暮らしているんだと思っていますよ。 真奈美が幸せならそれでいいんじゃないかな、恋のかたちもいろいろあって よいのではと思います。 |
