シリーズ「とある休日」 第5話 七瀬優



12月に入って寒さが一段と増すと、朝起きるのが辛くなる。
それでも、私はきまった時間に目がさめる。

朝陽が優しく、カーテンの隙間から部屋に入ってくる。
夏のような強い日差しではなく、暗闇を照らす優しいひかり。

今日も、気持ちのいい冬晴れの一日になるだろう。


























誕生日記念小説シリーズ「とある休日」
第5話 「七瀬優」


















 冬生まれの私は、冬という季節が好きだ。
なんといっても、普段より空気が済んでいて、星空がきれいに見えるから。


それに


・・・・・・彼のぬくもりを、よりいっそう感じられるから。




・・・・・・・・・・・・っと、もうお昼だ。




「・・・・・・そろそろ彼を起こさなきゃね」





部屋で眠る彼は、あどけない少年のような寝顔をしていた。
そんな彼の寝顔を、私は一人占めする。

ときたま、彼が私の寝顔を優しい目で眺めるように、
私も彼を愛しく見つめる。

彼のさらさらとした前髪をなぞり、頬をなでる。
すると、彼が少しだけ嬉しそうな顔になる。

「・・・・・・そんな顔をされると、思わずキスをしたくなるじゃないか」

そのまま彼の唇をなぞる。
そして、おはようのキスをする。

嘴(くちばし)をついばむような、軽いフレンチキス。

唇を離して、彼の耳もとでそっとささやいた。

「ほら、起きて・・・・・・朝だよ」




「・・・・・・ん・・・・・・ふぁぁぁ・・・・・・」


彼はあくびをして目をこする。
そして、半開きの眼で私を見た。


「・・・・・・おはよう、もうお昼だよ」

そう言うと、彼ものんびりとした口調と優しい笑顔で

「・・・・・・おはよう」

と返してくれた。


「・・・・・・さて、今日はなにしようか」

ぼーっと、彼を見ていたら、彼から声がかかった。

「あ・・・・・うん、洗濯とかは終わってるから、買い物にいこうよ」
「そうだね」

そういうと、彼はのそっとふとんから起き上がり、天に向かって腕を伸ばす。







そして、

おなかを抑えて一言。































「・・・・・・・・・・・・腹減った」

































その一言に、私は思わず吹き出してしまった。




「フッ・・・・・・・・・・・・それじゃ、お昼御飯食べてからだね」
「うん」

そういって、私は部屋を出た。

彼にご飯を作るために。




















キッチンに入った私は、鍋にお湯を沸かしペンネを茹でる。
ソースは手近にあったアラビアータソースを別の鍋で温める。


ふと、私は今の「私」を考えた。
いつから、私は甘えん坊になったんだろう。

彼と再会して、広島の街を歩いた時。
歩きなれたはずの街で新しい発見をして、はしゃぐ「私」がいた。

普段の私とは違う、そんな「私」がいた。















・・・・・・どっちが、本当の私なんだろう。































「優」





ふっと彼の呼ぶ声で、我に返る。






「あ・・・・・・どうしたの?」










「鍋・・・・・・噴いてるよ」


























「わっ」






私は慌てて鍋の火を止める。
一瞬遅かったら、確実に吹き零れていただろう。
火を止めると、鍋の泡はきれいにひいた。


「ふぅ・・・・・・ありがと」
「どういたしまして。・・・・・・どうしたの?」
「・・・・・・実は・・・・・・ね」
「うん」

彼は私の言葉を待つ。

でも私は



「・・・・・・なんでもない」



とだけ言った。


「フフッ・・・・・・なんでもないんだよ」


本当は彼に声をかけられたときに、ふっきれていた。

だからの『なんでもない』だった。


どんな「私」でも、「私」は私なんだってことを思い出した。




さて、この困り顔の彼と御飯を食べて、お買い物へ行こう。
腕に抱きついて街を歩き、また困らせるんだ。



そして・・・・・・・精一杯、甘えるんだ。
























それが、今の私だから。

<Story Over>






〜 榊 晶さんあとがき〜

あとがき


・・・・・・この話、休日じゃなくてもええやん・・・・・・と、
書いている途中で思いました。

いや、いろいろ考えたんですよ?これでも。
でも、やっぱり優は自分らしく生きて欲しいという事を考えると、
これは書いておかないと・・・・・・と思い、書きました。

オチは相変わらず弱いですが・・・・・・(汗)

最初のぺらい設定より、数倍いいものが書けたと榊は思っています。

それでは、来月の第6話「安達妙子」でお会いしましょう。



2001年12月18日
広島にて 榊 晶拝




〜今日のお話〜

優の優しい眼差しが暖かいですね。
いつもにも増して、心にすうっと、染み渡るようです。



(2001/12/18)




読者投稿作品募集中です♪




Return Top Page


「センチメンタルグラフティ」はNEC Inter Cannel/Marcus/Cybelle/Comix が独自に開発したオリジナル製品であり、
著作権、工業所有権、その他の諸権利はそれらが所有しております。

(c) NECインターチャネル/マーカス/サイベル/コミックス イラスト:甲斐智久
(c) NEC Interchannel, Marcus, Cybelle, Comix, illustrated by Kai Tomohisa