[PR]生年月日で2010年運命占い:初回無料!貴女の悩みを占い師に相談



きっかけ




降水確率10%の空がにわかにかき曇ると、大粒の雨が落ちてきた。

季節外れの夕立に、俺は少し屋根の張り出した場所を見つけて駆け込んだ。

ふう、ひどい目に遭った。

で、落ち着いて隣を見ると、もう一人雨宿りをしている人がいた。

「あ、沢渡さん…こんにちは」

「…こ、こんにちは」

沢渡さんは警戒感120%といった表情で俺を見ると俺から数歩、後ずさった。

まあ、今更でもないけど…しかし、あまり良い気分じゃないな。

そんなあからさまに警戒しなくても何もしやしないって。



沢渡さんは学校のクラスメートだ。

クラスでも抜群に目立つ、かわいい女の子なんだけど、もったいないことに筋金入りの男嫌い。

クラスの男子でモーションかけた奴も何人かいるらしいけど、みんな玉砕したって話だ。



俺は降り続いている雨をぼんやりと眺めていた。

「…もう少し経つとこれが雪になるんだろうね」

「そうね」

沢渡さんはそっけなく答えた。

転校して来てまだ半年、俺はまだ札幌の冬を知らないんだ。

「東京じゃあ雪が積もること自体珍しいから、こっちの冬が楽しみなんだ」

「そう」

沢渡さんと二人きりで間が持たないから話をしてみたけど、会話が続かない。

…沈黙…き、気まずい。えっと、何か話題、話題…う〜ん、あっ、そうだ…。



「あの、沢渡さん」

「何?」

「沢渡さんって、名前はほのかって言うんだよね」

クラスの女子が沢渡さんのことを「ほのか」って呼んでいるのを思い出して俺は言った。

「そうだけど…それが?」

「ひょっとして沢渡さん、小学生の頃に遠足で牧場に行って落馬しなかった?」

「えっ…?」

その瞬間、それまでそっけなかった沢渡さんの表情がパッと明るくなったように見えた。

「で、そのとき沢渡さんを助けようとして、同級生の男の子が足を骨折したでしょ」

「ど、どうして…どうしてそんなこと知ってるの?」



俺が札幌に転校することになったとき、同じクラスに子供の頃札幌に住んでいた奴がいて、そいつから予備知識として色々と聞いた。

札幌に住んでいたって言っても、小学生の頃に半年ほどのことだったそうだけど。

その話の中で沢渡さんの名前が出てきたんだ。まあ、骨折して入院したなんて小学生の頃としてはある意味、一大イベント(?)だし。



俺の話を聞きながら、沢渡さんは目をキラキラと輝かせていた。そんな沢渡さんを見ながら俺は妙にドキドキしていた。

沢渡さんは確かにクラスでも一二を争うくらいかわいいけど…俺たち男にはいつもツンと澄ましたような表情しか見せない。

その沢渡さんがこんな可愛らしい表情をするなんて…俺は初めて見た。



気が付くと雨が止み、空に虹がかかっていた。

沢渡さんは俺に小声で挨拶すると、駆け出して行った。

俺は屋根の下から外に歩み出して沢渡さんの後姿を見つめていた。



それから数日、沢渡さんは相変わらず男嫌いのまま。俺が近づこうとするとその3倍のスピードで離れてしまう。
あの日、俺に見せた可愛らしい表情は何だったんだ…。

そんなことを思いながら下駄箱で靴を履き替えていると後ろから声を掛けられた。

沢渡さんだった。



「どうしたの?沢渡さん」

「あの…ちょっと、お願いがあるの…」

沢渡さんは何か言いにくそうにモジモジしている。こっ、これは…噂に聞く愛の告白ってやつじゃあ…。

「あの…実はね…」

「うん…」

「…あの人の住所を教えて欲しいの」

「うん……?……あの人…?」

あの人、とは俺に札幌のことを教えてくれた、あいつのことだった。



俺の思考はたっぷり3分は停止していたらしい。

沢渡さんに何度も呼びかけられて俺はようやく我に返った。

「あっ、ええと…あいつの住所かい?うん、分かるよ」

俺は鞄からアドレス帳を取り出した。

あいつの住所を手帳に控えると、沢渡さんは暫らくその手帳を胸元に抱きしめるようにして目を閉じていた。

「沢渡さん?どうしたの?」

「えっ、ううん、何でもないの。それじゃ、ありがとう」

そう言い残して立ち去りかけて、沢渡さんは振り返った。

「あっ、それから、もう一つだけお願い。私があなたにあの人の住所を聞いたこと、誰にも内緒にして」

「? ああ、別にいいけど?」

俺の返事を聞いて、沢渡さんは少しだけほっとした表情をして駆け出して行った。



そんなことがあったことを俺がほとんど忘れかけた頃、教室で友達と他愛もない話をしているとき、ちょっと離れたところで話している女子の声が聞こえてきた。

聞くともなしに聞いていると、沢渡さんが今度、東京に行くとかいう内容だった。

何でも、沢渡さんはお父さんが大学教授で、学会の手伝いで東京まで同行するらしい。

沢渡さんは友達からお土産を頼まれて、その対応に苦労している様子だった。

俺はそれを聞きながら、この間あいつの住所を沢渡さんに教えたことを思い出していた。



それから月が変わって、俺は高校3年になった。

進級しても、沢渡さんとは同じクラスだった。…何となく嬉しい。

ま、それはともかく、全国的にはもう春だけどここ北海道はまだまだ涼しい、と言うより明確には寒い。

そんな寒さがようやく緩んできたある日曜日、俺は大通り公園であいつの姿を見かけた。

なんであいつが札幌に…と思って声をかけようとしたとき、あいつの隣に沢渡さんが居るのに気付いた。

俺は思わず木陰に隠れた。

…なんで隠れなきゃいけないんだ…?

そう思いながら俺は木陰から二人を見つめた。これって覗きじゃないか…と思いつつ。

沢渡さんがあいつに向ける表情は学校で俺が見なれた表情とは全く違っていた。

いつか雨宿りの屋根の下で俺に見せた、あの可愛らしい表情だった。

あの表情は俺にじゃなくてあいつに、あいつとの思い出に向けられていたんだな、と俺は今になってようやく気付いた。



大通り公園の木々に若葉が芽吹きかけた、そんな季節だった。






終り








〜 梅小路久彦さんあとがき〜

「共通の友人から見た二人」第三弾、ほのか編です。
今回の「俺」は自分でも気付かないまま、敵に塩を送っております(笑)。
このボケぶりは主人公君といい勝負ですね(そんなことで勝負すんな)




〜今日のお話〜

 彼の心理描写が絶妙ですね。
なんといいますかこう、中高生のときによく読んだ、青臭い青春を描いた
小説のような、そんな雰囲気を感じましたよ。

今日はなんだか、押入れの奥から懐かしい本を見つけたような、そんな気分になりました。
素敵なお話をありがとうございました♪



(2001/11/04)




読者投稿作品募集中です♪




Return Top Page


「センチメンタルグラフティ」はNEC Inter Cannel/Marcus/Cybelle/Comix が独自に開発したオリジナル製品であり、
著作権、工業所有権、その他の諸権利はそれらが所有しております。

(c) NECインターチャネル/マーカス/サイベル/コミックス イラスト:甲斐智久
(c) NEC Interchannel, Marcus, Cybelle, Comix, illustrated by Kai Tomohisa



[PR]結婚の悩みって多いょ!占う?:よく当たる願いが叶う占いって評判ダョ♪