若菜誕生日記念SS![]()
「KYOTO」
| 「うーむ…」 ハンドルを握りつつ初老の運転手は苦悩の表情を浮かべていた。 その空気を気にしてか、後の席に座っている少女が声をかけた。 『中島さん、どうされました?』 中島と呼ばれた初老の運転手ははっと我にかえり、その少女の質問に答えた。 「あっ、いえなんでもありませんよ。」 『そうですか…最近涼しくなってきましたね。』 「はい、このところは特に過ごしやすくなっていますね。」 『東京も…涼しくなってきたのでしょうか…。』 そうつぶやいた少女は窓の外へ目をやった、その表情はどこか寂しげであった。 (やはり、若菜お嬢様はあの少年のことを…) そう心の中で中島が呟いているうちに、車は綾崎家の門をくぐっていた。 中島は若菜の小さい頃より綾崎家で運転手として仕えてきた、そのため中島は若菜 を自分の娘のように心配してきた。 その若菜には心に決めた相手がいるのを知っていた、その相手は東京に住んでいて中 島とも面識がある、そこで中島はある案を考えた。 早速中島はとあるところに電話をかけた。 「はい、もしもし」 「もしもし、私若菜お嬢様の運転手の中島と申しますが…」 相手は、その少年であった。 「あっ、どうも、どうしたんですか?」 「はい、実は最近若菜お嬢様の様子がおかしいのです…私や大旦那様のお話はどこか 上の空で…しきりにあなた様のことをご心配されているようなのです。」 中島は、最後に若菜を京都駅へ迎えに行った後から今までの若菜の様子を中島の見て いた範囲のことを少年に説明した。 「…私の身勝手かもしれませんが、もしお時間が空いているのであれば、若菜お嬢様 に会いに来ていただきたいのですが…」 「わかりました、実は若菜の誕生日に会いに行くつもりなんですよ。」 「そうですか、それではこのことは若菜様には内緒にしておいて、若菜お嬢様を驚か せましょう。」 数日後、若菜の誕生日がやってきた、この日綾崎老は所用で1日外出していた、そこ で中島は若菜に、秋に色づき始めた京都の街を散策してはともちかけた。 若菜も 『たまには一人で散策するのもいいですね、行きましょうか。』 と中島に答えた、若菜は明るく答えていたが、長年若菜の事を見ていた中島は若菜の 表情の裏にある寂しさを見抜いていた。 その頃少年は中島との約束の時間に合うように新幹線の車内にいた、その傍らには 青い小さな箱があった。 「若菜…喜ぶかな?それとも、突然来たから驚くかな?」 と少年はふふっと笑った。 「若菜お嬢様、まずはどちらへいかれますか?」 軽快に車を走らせながら中島が若菜に話し掛けた。 『そうですね…嵐山のほうにでも…』 「かしこまりました、その前にちょっと寄り道をしてもよろしいでしょうか?」 『ええ、構いませんが…』 普段、中島は若菜の送迎中に寄り道などしないのだが、この日に限って寄り道をする といってきた、これはもちろん少年を迎えに行くためである。 そうして、四条通から烏丸通りを抜けて車は京都駅の烏丸口へと着いた。 「申し訳ありません、ここでしばらくお待ちください。」 そう若菜に伝え、中島は駅の構内へ向かった。 「…時間は10時、そろそろ着く頃ですね。」 そう、新幹線の改札前でつぶやいていると、少年が改札を抜けて中島のもとへやって きた。 「長旅お疲れ様です、ご案内いたします。」 中島は優しい微笑みと共に少年を、若菜の待つ車へと案内した。 中島が若菜のもとを離れて10分後、中島が戻ってきた。 「お待たせいたしました、実は私、急に大旦那様の迎えに行かねばならなくなりまし た、それでこの後はこの方と京都を回られてはいかがでしょう?」 そう中島が言うと、影にいた少年がひょこっと若菜の前に現れた。 「やぁ、若菜…久しぶりだね…」 若菜は突然の訪問に少し驚きつつも、その顔はとても嬉しそうだった。 『まぁ、いつ京都へ?』 少年は頭をかきながら 「いや、さっきついたんだ…それより若菜、誕生日おめでとう…。」 そう言って、少年は持ってきた小箱を若菜に手渡した。 『嬉しい…覚えていてくれたのですね?』 「うん…」 中島はそんな二人を優しい笑顔で見守っていた。 中島は車のエンジンをかけ、 「それでは、私は大旦那様の下へ向かいます、夕方5時に京都駅に迎えに上がります ので。」 『わかりました、よろしくお願い致します。』 そのあと中島は少年に 「若菜お嬢様の事、頼みましたよ。」 「はい、分かりました。」 そう言って、中島はアクセルを踏んだ。 「…さて…あと7時間か…私もたまにはゆっくりと京都を散策してみるかな…。」 そうつぶやき、初秋の古都へ車を走らせた。 |
榊 晶さんあとがき
| あとがき 若菜の誕生日SSってことですが… 中島さんのSSになってしまいました(笑) 中島さんなりの若菜への誕生日プレゼントといったところでしょうか? 初案では爺さん(綾崎老)が少年に電話して若菜の誕生日を祝わせようとしたんです が、ここはやはり二人をよく知る中島さんのほうが適役だと思い、中島さんを登板さ せました。 時間的流れとしては、9月頃嵐山に行くイベントの前哨と思っていただければ、実際 ゲームでは9月16日は平日でデートできないのですが、細かいこといいっこなしっ てことで(爆) 久しぶりに、ちょっと長めのお話になりましたが、いかがだったでしょうか? 前作(るりか誕生日SS)があまりにも暗かったんで、今回は小さな幸せということ で…。 今、榊のページで書いているSS(優メイン)のヤツは、かなり内容の深い作品にな りそうなので、ちょっとした息抜きのつもりで書きました。 それではまたいつかお会いしましょう!! 文責:榊 晶(さかきあきら)/Akira Sakaki |
| 榊 晶さんより、若菜誕生日プレゼントの小説を頂きました。 中島は若菜の気持ちがよく分かっているんですよ。 きっと、いつもバックミラーごしに、心ここにあらずといったように車窓を眺める 若菜を目の当たりにして、そう思ったんでしょうね。 それにしても、中島は本当にいい人です。 キャラコレCDかなにかでも、気をきかせて私と若菜と会わせてくれました。 若菜へのいいプレゼントになりましたね。 おおきにでした〜♪
KAZ
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