アクセル
| 『あなたに…あいたい』 去年の春先に届いた差出人不明の手紙…僕はこの手紙の差出人がるりかだと思い、去年の夏にるりかと再会した。 そうして半年がすぎ…僕はるりかを愛し、学生の身分ながらに遠距離恋愛を続けていた。 だが…あの手紙の差出人がるりかなのかどうか今だにわからず、今日もその手紙をるりかとの再会のきっかけを作ってくれたお守りとして財布の中にしのばせた。 「よお!!久しぶりだな。」 るりかとの待ち合わせ場所に着いた僕に声をかけてきたのは、るりかの双子の兄である昌宏だった。 「今日、るりかは風邪でこれないんだと。代理で伝えに来たぜ。」 だったら連絡してくれよ…、と僕は昌宏に言った。 「いや、今日は俺の方がお前に直接話がしたかった。だからわざと連絡しなかった。…ま、こんな所で立ち話もなんだな、ちょっと付き合えよ。」 僕は仕方なく昌宏に付いて行くことにした。まぁ、男同士でしか出来ない会話もあるからこういうのもたまにはいいか…と割り切ることにした。 僕達は昌宏の運転するオープンカーで名古屋市内をドライブした。いつもるりかと一緒にのんびりと肩を並べて歩く時の名古屋とはまた違った光景が時速40kmで通り過ぎて行った。 「・・・なぁ、一つ聞いていいか?」 僕は首を縦に振る。 「お前…去年の夏にいきなりるりかに会いに来たよな?…なんか理由あるんだよな?」 僕は財布にいつもしのばせている手紙を昌宏に見せた。無論、運転中のわき見運転は危ないので信号待ちの時に見せたのだが。 「『あなたに…あいたい』…ねぇ、この手紙がどうした?」 信号が青になると同時に昌宏は僕に手紙を返してくれた。僕は春先に届いたこの手紙の事を話す。 「…へぇ、なるほどな…それでもしかしたらるりかじゃないか…と、でも、こいつはるりかの字じゃないぜ。双子の俺が言うんだ。間違いない。」 再び信号待ち。今度はスクランブルのある交差点だけに待ち時間が長くなりそうだ。 「…となると、お前の事をずっと想っている女がいるって事だよな?…だが、もうそんな事はどうでもいいんじゃないのか?」 昌宏は僕が手に持つそれを一瞬のうちに奪いとって粉みじんに破り捨て、早春の風に乗せた。僕は白い桜吹雪となった手紙を呆然と見ていた。 「きっかけはどうあれ、お前は今るりかと付き合っている。そうだろ?」 僕は楯に首を振る。 「その女には悪いかもしれないけど…だけどいつまでも過去を引きずってるのもカッコ悪いぜ!!それにるりかが見たらどうなるか…だろ?」 昌宏は僕を見て微笑する。僕もフッと息を軽くはいて、全てを吹っ切った爽やかな笑顔を昌宏に見せる。信号が青に変わる。 「そうだ、るりかに泣かれちゃ俺もかなわんからな!!その気持ち、忘れるんじゃないぜ!!さぁ、かっとばしていくぜ!!」 昌宏はアクセルを思いっきり踏んで車を走らせた。…そう、僕の過去のもやもやを吹き飛ばす様に…。 僕とるりかの恋は改めてアクセルを踏んだ…そんな気がした3月の始め…。 「ところで…るりかとはどこまでいってるんだ?まさかAもないとは言わせないぜ!!」 僕は昌宏の問いに顔を赤らめる。 「ハハハ…相変わらず純情だな!!ま、なにかあったらこの経験豊富なお兄さんに相談しろよ!!ハハハハ…。」 よくよく考えて見ればるりかと結婚するとなったら、昌宏を『お兄さん』と呼ばなきゃいけないんだよな…。 それがネックだけど…るりかといつまでもいられるならそれもいいか…などと思ったりもした。 |
〜 龍切 晶さんあとがき〜
| 今回はせつなさの星空初!!山本昌宏と主人公のSSに挑戦してみました… というより昌宏が書きたかった!!(爆)そんな思いで書きました。 お気に召していただけたならこれ幸いです。 |
| 今日は昌宏が主役ですか。 男と男のやり取りといいますか、妹を思う思いといいますか、そんな微妙な やり取りが私の心の琴線に触れましたよ。 |
