ためいき
| 「あ〜ぁ、折角の部活やのに、なんで夏穂先輩休みなんかなぁ」 日曜の部活。普段なら放課後数時間のところが、半日いや記録も とれば一日中一緒にいられる貴重な時間なのに。 そりゃ、大会の後だし休養が大切なのは分かるけど。でもなぁ…。 私は恨めし気に空を見上げた。今日は雲一つ無い青空が広がる絶 好の行楽日和で、その青天のもと私の周りにはカップルや家族連れ がゾロゾロと歩いている。 みんな楽しそう。 溜息をつきながら歩いていると駅前で見覚えのある男の子とすれ 違った。 「あれ、あの子どっかで・・・」 一瞬の後、私は弾かれる様に回れ右して彼を追いかけいた。 「間違い無い、あれは夏穂先輩にチョッカイだしてる東京モンや」 もし夏穂先輩にチョッカイ出しに大阪まで来たんやったら容赦せ やへん。夏穂先輩安心しとってや、私が必ず守ったげます! と、意気込んで後をつけてみたものの…。 ミナミに着いたあいつは、待ち合わせをするでもなく、かと言っ て「おたふく」に向かうでもなく午前中ブラブラと商店街を見てま わり。その後は近くの小学校を暫く眺めていたかと思うと、これま た近くの土手を「明かし焼き」をパクつきながら楽しそうに散歩し て、午後からは大阪の街をひやかしている。 アイツなにやってんのや、糸の切れた凧みたいにフラフラして。 これやったら部活さぼってまでつけまわしてる私がアホみたいや んか…。 押寄せる虚脱感にチョットめげていると、アイツは何故か駅へと 向かって歩き始めた。 まさか夏穂先輩に逢わずに帰る気なんか? 「ちょっと待ちぃ!そこの東京モン!」 あいつは辺りをキョロキョロした後、自分を指差しながら目で私 に訊いて来た。 「そうや、あんたや!夏穂先輩を袖にするとはええ度胸やんか。無 事に東京へ帰られる思わんときや!」 「あ、夏穂の知り合いなんだ。初めまして僕は」 て、なんで自己紹介始めるかな。人の話きけっちゅーねん、これ やから東京もんは嫌やわ。 「あんた、なんで逢いにいかへんのや!」 「ちょっと夏穂の顔が見たくなって来ただけなんだ──でも、約束 も無しに押掛けたりしたら迷惑でしょ?」 私の正直な感想。コイツもしかして…ほんまもんのアホ? 「ただ夏穂が住んでる街を見て回るのもいいかなって。それに同じ 街の中に居ると思うと、もしかしたら偶然逢えるんじゃないかワク ワクするじゃない」 子供みたいに無邪気に話してくるコイツを見ていて、最近よくす る様になった夏穂先輩のためいきの理由が解ってきた。 私は無言で思いっきり奴の耳を引っ張っると、そのまま歩き出し た。道すがら好奇の目を向ける連中や抗議の声をあげるコイツは完 全無視して「おたふく」を目指す。 夕刻まだ暖簾の出ていない「おたふく」の戸を開けさせ。 「こんっの、アホタレっ! 逢いに来たんやったら逢うていくんが 男やろが!」 そう大声で怒鳴ると、「おたふく」の店の中へ靴の裏側全部で思 いっきり蹴り入れた。 どんがらがっしゃん!! 店の中から椅子やテーブルの倒れる音と夏穂先輩のあわてた、け どどことなく嬉しそうな声が外まで洩れてくる。 まったく、この唐変木は、そこで少しは反省しとき。それから癪 やけど、夏穂先輩。これで明日は元気な顔、見せてくださいね。 そう心の中で話し掛けて私は「おたふく」を後にした。 あっ、これはハンデやから。勘違いせんときや、東京モン! |
| 夏穂に逢えなくてもそれなりに大阪の街を楽しんでいる唐変木と それを見つけた夏穂の後輩のユキちゃんの話です。 読んでいたたでれば幸いです。 それから大阪弁の考証をして頂いたKAZさんに感謝。 |
| これはこれは、今日はユキちゃん大活躍ですね! どう見ても戦況は彼女に不利なのですが、今日だけはちょっとだけ応援しときましょうか♪ そうそう、ユキちゃんを知らない人のために解説しておきますと、 ユキちゃんというのは小説「再会」に出てきた、陸上部の、夏穂の後輩の女の子です。 また、このユキちゃんは夏穂のことが大好きで、いつも夏穂の側にべったり! さしもの夏穂も、ユキにはたじたじのようです。 でも、今日はユキに大感謝ですネ! お幸せに〜♪ |
