〜 Airport 〜







珍しく、彼から電話があった。

『明日11時の飛行機で長崎にいくから』
って。

留守番電話に入っていたメッセージ。

何度も何度も聞き返した。

端的に入っている彼からのメッセージは、
とても味気ないものだけど。


嬉しい。

すっごく嬉しい。


彼が私に会いにきてくれる。

そう思うだけで、私の胸は高鳴る。

時計を見るとまだ夜の8時。

私は明日の準備をして、早めにベッドに入った。


















「Airport」





















Pi Pi Pi Pi……




カチッ











うーん、もう少し………寝たい。












……今日は日曜日だから、もう少し寝ましょう……。
























「……日曜?」

















まだ働いていない頭をフルに動かして、昨日のことを思い出す。





『明日11時の飛行機で長崎にいくから』





!!!!!





そうだ!彼が来るんだ!!


私は掛け布団を跳ね除け、飛び上がる。

時計を確認すると、もう8時。

家から空港までが1時間だから……。

……あと2時間しかない……。

今日着ていく服をいろいろとシュミレーションしていて、
そのまま眠ってしまった。

私はすぐにクローゼットを乱暴に開け、
ハンガーにかかっている服をベッドに投げていった。

部屋の中には、まるで嵐がきたかのように、
どんどん服が散乱していった。

時計は8時30分をさしていた。

服のコーディネートを一旦止めて、私はバスルームへ走った。

寝汗のかいた状態は、べたべたしていて気持ち悪い。
それに、こんな寝ぐせ髪でなんかいけるわけがないわ。




「♪〜〜♪〜♪〜〜〜♪」

寝起きの頭に、少し熱めのシャワーを浴びて髪を洗う。
次第に眠気が覚めて、頭がすっきりしてくる。

最後に冷たいシャワーを浴びて、身体をさっぱりさせる。

「……ふぅ。」

バスタオルで濡れた髪の水滴をふき取り、丁寧に乾かす。
粗方水滴が取れたところで、ドライヤーを当てる。
少し湿っている状態で止めて、丁寧にブラッシングをする。

一通りが終わり時計を見ると、もう9時前になっていた。

散らかっている服の中から、
私は緑のチェックのノースリーブシャツと、白いストレッチのスカートを選んだ。



……こんなものね。



軽く身だしなみをチェックして、最後に淡いピンクのリップを塗る。

「……ん……よっし!」

私は意気揚揚と部屋を出て、リビングへ向かった。


「おはよう。」

「おはよう晶、早いわね。」

リビングでは母さんが朝食の準備をしていた。
私はいすに腰掛け、淹れ立てのコーヒーをすする。

「あら?今日は出かけるの?」

「うん、これから出かけてくるわ。」

「そう?じゃ、帰りは明日の朝ね。」


ぶーっ……。


「げほっ……ごほごほ……」

私は盛大にむせた。

「な、何で!?」

「……違うの?」

真剣な顔をして聞いてくる母さん。
何を考えているんだか……。

「違うわよ!東京から友達が来るのよ!!」

「いつもの男の子でしょ?」

「そ、そうよ!」

ヘンに声が上擦ってしまった……。

「……で、いつ連れてくるの?」


がしゃーん。

今度は盛大にテーブルとキスしてしまった。


「あらあら、大丈夫?」

「……とーっても、痛いわ……。」

おでこをさすりつつ、時計を見遣る。



……9時15分……。





「あーーーーーーー!!!」

母さんと話すと、どうもペースが狂ってしまう。
私は大急ぎで、キツネ色に焼けたトーストにバターを塗って齧る。

うん、朝はパンとコーヒーね。

……って、あまり味わっている暇はないわね。

トースト1枚とコーヒー1杯で、朝食を終えて、リビングを出た。

玄関で靴を履いていると後に母さんがたっていた。

「晶。」

「何よ。」

「今晩は父さんいないわよ。」

「……だから?」

「連れてきても問題ないわ。」

「……いってきます。」

母さんの言葉を無視して、家を出た。
腕時計を確かめると、9時30分だった。

坂を降りて、近くの電停まで歩く。

空は青く澄んだ空だった。
梅雨の合間の晴れ間でとても気持ちがいい。

しばらくすると、南山手のバス停に空港ゆきのバスが見えた。

少し小走りでバスに乗り込む。

「ふぅ……これで大丈夫ね。」

バスは静かに走り出した。

途中高速道を経由して、空港まで1時間くらいで着く。
これで、ちょうどいいくらいね。

すこしホッとすると、急に眠気に襲われてきた。

私は安心感から、そのまま眠ってしまった。


















「……ううん……。」

30分ぐらい眠っただろう。
窓の外を見ると、










バスは止まっていた。










どうやら、渋滞につかまってしまったらしい。

時計は11時の少し前をさしていた。


……間に合わない。


折角彼が遊びにきてくれるから、迎えに行こうと思ったのに……。







「あれっ?」

急に視界がぼやけた。
私は涙を流していた。

いつも彼を待たせているから、今日は迎えようと思ったのに……。

悔しくて、私は静かに涙を流していた。

しばらくすると渋滞を抜けたようで、バスは快調に走った。



空港には予定より20分遅く着いた。

「……東京からの飛行機は……。」

案内板で到着を確認すると、まだ着いていなかったみたい。

少しほっとして、到着出口の前で彼の到着を待った。


バッグの中から、鏡を取り出してチェックする。

少し眼が赤いわね……。

しばらくすると到着したというアナウンスが流れた。

そして、出口から大勢の人が吐き出される。

そんな波の中で彼の姿を探す。






いない







いない







いない






いない













いた。





彼の姿を見つけると、胸の高鳴りが一段と早くなった。


私が手を振ると、彼は少し驚いていた。

そして、私のところへ駆け寄ってきた。



「こんにちは!」

私は彼に精一杯の笑顔を向けた。



<Story Over>





榊 晶さんあとがき

あとがき
というわけで、晶様です。
この後のデートは、皆さんのご想像にお任せします。

……どうも、最近書く作品に出てくる母親は、
ぶっ飛んでいる性格の人が多いですね……。

いつもお世話になっているKAZさんのHP
「せつなさの星空」の100000ヒットオーバーを記念して、
この作品を送りたいと思います。

それでは!

2001年6月27日
榊 晶拝










今日は榊晶さんより、うちの100,000Access記念にと、こんな素敵なお話を頂いてしまいました!
いつもいつも、ありがとうございますです。

でも、そういえば、センチでは両親の話はあまり出てきませんね。
晶の父親母親は、どんな感じの人なんでしょうか。
今回のお話でも、あっけらかんとした母さんに心惹かれました。
いいお母さんじゃないですか。
突然、とんでもないことを言い出すあたりや、先の先を読んでいるところが流石ですね。
年の功、だなんて言ったら怒られますでしょうかね。





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