これが飲まずにいられるか!



「ほんと、母ちゃんにも困ったもんだよなぁ」
 今日ささやかに開かれる筈だった姉ちゃんと義兄ちゃんの最初の結婚記念日は、既に近
所を巻き込んだ大宴会とかしている。
 まぁ、あの話を訊いて浮かれて舞い上がった母ちゃんが原因なのだが、さすがに付き合い
きれなくなった僕は、手近にあったビールと共に外へと抜け出してきたところだ。

「それにしても姉ちゃん。嬉しそうだったな」
 僕は手近な庭石に腰を降ろして、義兄ちゃんの隣で顔を赤らめていた姉を思い返し呟いた。
 まぁ、8年越しの恋。しかも遠距離恋愛を実らせての結婚とくれば地元では結構有名だ。
 今では、遠距離恋愛のカップルがウチのお酒を飲むと別れずにすむとか、「結婚祝いには
安達酒店の酒を贈る」なんて変な縁起かつぎが流行ってしまっている。
  
 でも、義兄ちゃんも物好きだよなぁ、東京には可愛い女の子なんて山ほどいただろうに、
わざわざ姉ちゃんを選ぶなんてさ。

 持ってきたビールを空けながら僕は、ちょっと妙子姉ちゃん分析モードに入ってみる。

 まず姉ちゃんアクセサリーの類は嫌いだろ──でも結婚指輪だけは絶対外さないんだよな。
 グビッ。
 それに化粧気もないし──でも義兄ちゃんと一緒に居る時はすんげー綺麗だし幸せそう。
 グビッグビッ。
 あっ、でも料理は天下一品なんだよな──でも、だんだん味付けが義兄ちゃんの好みに
変わってきてる。
 グビッグビッグビッ。
 それに、それに…。
 グビッグビッグビッグビッ。何故か気が付けば自棄酒モードに入っていった。

 くっそー、姉ちゃんは、姉ちゃんは僕の姉ちゃんだったのに〜っ。

 翌朝の安達家

「うぅ、頭いって〜、みっ水〜」
 二日酔いから来る頭痛に苦しみながら、台所に顔をだすと姉ちゃんに、
「はい。まったく、高校生のくせに二日酔いだなんて生意気だぞ」
 こうなる事を見越したかの様に小言と共にコップの冷たい水を手渡された。
「さ、さんきゅ〜」
 姉ちゃんに感謝しつつ、コップを傾けた時。何気ない、本当に何気ない調子で姉ちゃんは
言った。あの忌わしい言葉を。
「あんたももう叔父さんに成るんだからしっかりしてよね」
 冷たい水は一気に気管へと流れた。






〜 酸素泥棒さんあとがき 〜

 今回は、妙子の弟純君のせつないお話です。結構お姉ちゃん子みたいなので
本人はショック大でしょう。
でも妙子姉ちゃんの幸せの為、潔くオジサンになってくれ。



〜今日のお話〜

 今日もまた酸素泥棒さんより、純と妙子の小説を頂きました。
今日はまたせつない話ですね。

私には姉も妹もいないのですが、純君の気持ちは良く分かります。
姉さんを取られるってこんな気分なんですね。
私でしたら一発、ぶん殴っているところですよ。



(2000/10/01)




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